素描スケッチより

 福岡市の中心部には近代的なビルが増えてきましたが、その中にあって赤煉瓦文化館が昔の面影を残しています。

 赤煉瓦文化館は旧日本生命ビルなのですが、30年ほど前、すぐ近くの西中洲にもうひとつ、右の絵のようなクラシック建築の大同生命ビルという建物がありました。
 現在のアクロス福岡が旧福岡県庁で、大同生命ビルは川を挟んですぐ横に並んで建っていました。ドーム屋根の塔があり、やや黄色味を帯びたレンガで造られた美しい建物でした。
 1979年の夏の終わり頃、当時は生活排水で濁っていた川の臭いとやぶ蚊に悩まされながらも建物のすばらしさに魅力を感じてスケッチしました。
 さらにその隣は九州相互銀行の白い建物があり、柱頭にアカンサスの飾りが付いたコリント式の優美な円柱が印象的でした。
 旧県庁の明治通りをはさんだ筋向いには、旧やまと生命ビルがありました。
 下が交通公社になっていた小さなビルでしたが、目立たないながらも屋根にはギリシア様式のパルメット文様のアクロテリオン(アンテフィクサ)の飾りが付いていました。
 残念ながらそれらの建物は殆どなくなり、現在はわずかに昭和通にあるイオニア式の円柱を持った日本銀行と、一時は教育庁として使われた県公会堂貴賓館が赤煉瓦文化館と共に残っているだけのようです。
 大同生命は近代的な高層ビルとして建て替えられましたが、幸いなことに旧ビルは壊されることなく、八女グリンピアに移築されました。
 まだ行ったことがないのですがいつか訪ねてスケッチしたいと思っています。