2011年01月

2011年1月19日

 小学校高学年の図工科で、以前ペーパーナイフなどを作る木彫の学習がありました。
 30センチ余りの桂の板を使い一つの作品を作り上げるわけですが、板を無駄なく使うデザインを考え、電動糸鋸で形を切り、切り出しナイフで削り、彫刻刀で彫り、紙やすりで磨き、ステインで着色してワックス仕上げをするという、多くの材料と技術を経験しながら作ります。
 こう書くとただ坦々とした決められた作業みたいですが、それぞれの過程で苦労やスリルがあり、最後に木彫ワックスを塗って磨く時の嬉しそうな子どもたちの顔がたまらなくいいのです。
 苦労の最初はデザインから始まります。細長い板の形に合う自分オリジナルで美しいデザインを考えなければいけないのです。
 子どもたちのアイディアを生かした指導は根気もいりますが、みんな頑張ってその苦労が次第にほほえましい作品に表れてくるという、本当によく出来た題材でした。
 残念ながら現在の教科書には載っていませんが在職中、私はよくこの題材を使いました。
 卒業生の方の中に今でも持っている人がいるかなあと思っています。  
 私も授業用にそのつどサンプル作品を作りましたが、現在もまだ数本持っています。
 写真をご覧いただきたいのですが、フォークはまだ若かったころの作品、下のペーパーナイフは15年ほど前だったと思います。
 これらを見ると、子どもたちが黙々と作品に取り組んでいた当時の姿を思い出します。

 40数年前、就職した初任給で以前から欲しかったオペラグラスを買いました。当時はプリズム式のコンパクトな双眼鏡など珍しかったころでニコンから発売されたものでした。
 皮ケース付きで当時の値段で6000円ほどでしたが、給料の三分の一ほどが飛んでしまいました。
 小さくて軽いので、旅行はもちろんどこにでも持って行きましたし、うれしいことに現在も同じ型の製品が店で売られています。

 この愛用のオペラグラスですが、昨年ごろからレンズの内側に少しカビが出てきました。
 早速修理に出したところ、メーカーから「修理不能」ということで返却されてきたのです。
 現在も同じものが販売中なのになぜだろうと思って理由を聞くと、「同じように見えても内部の構造や部品は以前のものと違っているので、完全な修理は不可能です。もしも分解して光軸が狂った場合には元通りにするのは困難です。」ということでした。
 このままダメになるまで使い続けるのか、それともダメモトで修理を頼むのか、少しずつ広がってくるカビを見ながら40年以上愛用したわが子のようなオペラグラスを見ながら悩んでいる毎日です。